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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

情報と社会あるいはソフトウェアとコミュニティ

情報社会科学という言葉について、一つの定義付けを試みる。

 

情報技術の成果というと、ソフトウェアが挙げられる。ソフトウェアはある計算環境で動くものであり、これまでは、ある汎用の計算環境を想定してその上で動くものとしていた。最近では、ソフトウェアの一部をハードウェアに置き換えて実装することもあるから、ここで言うソフトウェアはソフトウェアとハードウェアが協調的に動作するように実装されているものまで含むことにする。

 

ソフトウェアはあるコミュニティで行われている業務を助け、そのコミュニティのメンバーが行う作業を置き換えるために制作する。このことから、アルゴリズムとソフトウェアトの間に次の違いが見つかる。

アルゴリズムはそれ自身が閉じた形で定義される計算手順。

‐ソフトウェアは対象とする業務と関連づけて定義されたアルゴリズム

ソフトウェアは定義に沿って、情報と社会とを関連づける。この関連づけは、図式的にはこんな形にかける*1

f:id:Y_Shigaraki:20170517232930j:plain

この図式は情報科学の側から見ているので、コミュニティからの一つの要求に対するソフトウェア単品の制作という図式になっている。以下では焦点を当てる対象をコミュニティに変更した結果として現れる研究分野を考える。

 

コミュニティ側には、要求したソフトウェアを目的に沿って使い続ける業務がある。この業務は時間とともに発展し、それに伴って次の事象が起こる。

‐ソフトウェアの運用によってデータが作成され蓄積される。

‐新しいソフトウェアに対する要求が発生する。

‐それまでに導入し稼働しているソフトウェアとの協調作業が発生する。

このような事象に問題を起こさず対応するためには、コミュニティ側にも情報処理に関する課題が発生し、これを解決する技術が必要になる。

 

コミュニティ側に発生する情報処理に関する課題を把握するには、コミュニティ側の活動を全体として把握することが必要になる。情報処理と関連づけるためにコミュニティ側の活動を把握するという課題からは、情報と社会との係わりのあり方を研究する一つの課題が導かれると期待される。これが均質な単一の課題となるかについては自明ではない。

情報処理関係の活動が均質な単一の課題としてコミュニティ側に定着している例としては次がある。

‐コミュニティ側の活動が企業活動の場合には、既に、業務プロセスの改革(Business Process Re-engineering、BPR)、企業資源の計画(Enterprise Resource Planning、ERP)などの名称で企業活動の全体像を捉える方法が提案され、実践されている。

‐コミュニティ側の活動が自然科学分野の研究活動である場合には、その分野の基礎理論からコミュニティの活動の基盤に関する技術が共有される。この基礎理論に関する活動の形で活動の全体像を捉えることが考えられる。具体的には、数式モデルの解析、現象を再現するための設備の設計と実現、現象を観測するための設備の設計と実現などの活動がある。

 

これに対して、コミュニティ側の活動が人文系分野の研究活動である場合には、一つの分野内での活動が、独立したサブコミュニテいが互いに緩く関連しあって行われるという傾向が見られる。これは、人文系分野の研究活動が、文献・資料の精査の結果として仮説が導かれ、仮説群の中から信頼できる仮説を選びこれを定説とする、というような、文献・資料を対象として精査し、その結果から昨日的に結論を導くという方法に沿って行われることによる。

文献・資料とソフトウェアとの係わりとしては、文字の並びによって構成される文書資料(テキスト)について、テキストデータベース作成、テキスト中に特定の語句が現れる位置を調べる語句検索、特定の語句の出現頻度解析(Oxford Concordance Program、OCP)、特定の順序で結合した語群の出現頻度解析(マルコフ過程との関連でN-gram法)などが行われている。また、ある種のカリグラフィを電子化する技術についても研究例がある。

 

ソフトウェア技術の観点からは、テキスト、音響、並びにイメージ及び図を統合する、複合文書技術が発展している。筆者は、複合文書技術と関連する情報技術を総合的に利用する分野として情報技術と音楽学とが相互に関連を調べ、音楽に係わるコミュニティの中に、情報技術と係わる新しい研究分野を拓く可能性を調べるという活動に興味をもっている。

民族音楽学の分野では、数値計算による信号解析法を音楽分析に適用した例が電子計算機の登場以前に行われている(兼常清佐日本民謡研究)。兼常の研究は数値計算による信号解析法を基礎としており、情報技術の導入法が見易い。但し、最新の情報技術を前提とすれば、信号としての音楽がもつ特性を抽出し、結果を分析しグラフ化し、音楽の特性に適合する専用の記譜法を設計して、音と楽譜と文書資料との組み合わせを一つのデータとして保存する、といった処理も可能になる。このような処理を、五線譜のような既存の記譜法によらず、音楽に忠実に行うことができれば、音楽学のコミュニティの一角に新しい研究課題を定義することもできるのではないか。

 

以上により、「情報民族音楽学」という言葉が指す内容として、問題を引き起こすことなく情報関連の知見を民族音楽学の分野に導入し、情報処理技術を利用しつつ活動を行う民族音楽学、という定義を描いてみた。

*1:制作の中にある箱の間に→を書かないのがミソ。

背伸びせずに

4月の初めに予想外の出来事があり、当初は落ち着き先が見通せない事もあって焦っていた。

 

最近、落ち着き先が見えてきたので一息ついているのだけれど、今までみたいな生活パターンは取りにくくなっている。まぁ、今までが例外でこれからが普通、と言ってもいいような話なのだけれど。

 

ここまでに書いた音程の話も、結局、数年前から書いていた前の版の文書で曖昧にしか書けなかったところをしっかり書きましょう、という話で、話として完結させるまでにはまだまだ労力と時間とがいる。もともと、何かを言いたければ、心理テストの知見でなく物理的・音響学的なデータを揃えて、データに基づいて話しましょう、という立場に拠っているので、ただでさえ時間と労力とがかかるやり方でやってきたのだが。

 

といっても別にどこかと契約している話でもないから、できる範囲で、生活のパターンに合わせて続けてゆく事になる。そのためには今まで以上に、全体の青写真を明確にしておかないと何事も中途半端になってしまうのだが。しかし、青写真を調整するとまた最初に戻ったみたいな感じになって、何やっているんだか感にとらわれてしまう・・;

現象と法則、実践と基準あるいは・・・

自然現象は自然界の法則に従って起こる。さらっと言われるとごもっともという以外にない。ここで「自然現象」という言葉にもう少し拘ると、意外に底が深い所にある事に気付く。「自然現象」という時には、決して、目に見える、あるいは耳に聞こえる・・現象そのものではない。

高い所から物を落とすと、重いもの(鉄の玉など)は軽いもの(鶏の羽など)より早く落ちる。日常起こる出来事を「自然現象」と思うと、自然界では「重いものは軽いものより早く落ちる」と言いたくなるが、これは出来事レベルの話であり、これを「自然現象」の箱の中に入れるためにはこの出来事を見る見方を決める必要がある。物を落とす場合には、落とす出来事が起こる場所がもつべき特性(静止しているか動いているか、どのような力が働いているか)の指定がある。「現象」を自然界の法則の形で書くにはさらに見方に関する指定が加わる。物を落とす場合なら、物の形が落ちている最中に代わる事がないという仮定(剛体仮説)を置いて、物に働く力を一点の重心に纏める。そうすると、ニュートンの法則をこのものの落下に関する現象に適用出来て、重心の運動に関する方程式が立つ。

 

これが音楽とどう関係するかを言う前に、言葉遣いを整理する。

自然現象に、法則、現象、出来事の三段階の見方を認める。

これは音楽の場合に、対応する次の三段階を認めてよいのではないか、という事でもある。

‐規範:楽譜に書かれた音楽の仕組み、

‐実践:演奏家が意図する演奏(を記録する楽譜)、

‐現象:聴かれる音

規範(楽譜)と現象(音楽音)との関係は単純ではなく、西洋の音楽でさえ、演奏家は楽譜に書かれたとおりに演奏している訳ではなく、演奏家による楽譜の解釈が行われている。ピアノの場合、鍵盤を押すタイミング、鍵盤を押す力、ペダルの使い方をはじめとする演奏家の裁量で音が変わってくる。さらに演奏家の実践と演奏されて聴かれる音(現象)との間には、ピアノの調律技術・整備技術、会場の設定など、音が影響を受ける要素がある。

 

こんなことを考えると、前の記事で計算した音程の仕組みは、楽譜に書かれた音楽の仕組みの分析ではあっても、演奏家が意図する演奏の分析には直接は繋がらず、ましてや、当日の会場や楽器のコンディションに影響をうける実際の音を分析して音楽の性質を調べる活動からははるかに遠いと言わざるを得ない。ただ、互いの間に包含する関係があってもよいと思える。

採譜という作業はこの、実際に演奏された音のいくつかの例から始めて、演奏家の意図する演奏、さらには楽譜に書かれた音楽の仕組みを明かそうという試みの実践であると言える。今の所直観的な判断ではあるけれど、これらを直接繋ぐ経路を見出すことはまだ難しく、出来る事は各段階で資料を集めて整理し、各段階での見え方をはっきりさせることなのではないか。うまくゆけば、包含関係の外側にある基準を使って内側の基準を整理できるかもしれない。例えば、その音楽には狭くとも半音までの音程しか出てこない事がその音楽の理論上から保証されているなら、採譜データの処理結果に半音より狭い音程が現れた場合、これを例外事象として扱うことができる。演奏上のミスか、あるいは表現上の意図か、ここは判断が必要になる。

[情報民族音楽学研究]“読書(2)_語句の収集 階名と音名”の補足

OneDriveには読書(2)として掲載していたもの。ここでは前回、音程について補足した版を作る、と書いていたもの。主な参考書は次の3冊。

1)福井昭史、よくわかる日本音楽基礎講座、音楽の友社(2006年8月10日)[ISBN427630704X]

2)岩田宗一、声明は音楽のふるさと、法藏館(2009年6月20日)[ISBN9784831862143]

3)芝祐泰、五線譜による雅楽総譜  巻一 歌曲編、カワイ楽譜オンデマンド出版

 

下表のうち音程を除く項目は上記参考書1の127頁にある表「神楽歌の音律構成」に基づいて作表した。

音程欄は、隣接する2音間の音程を示す。音程の単位は1オクターブを300等分するサバールによった。(1サバール=4セント)オクターブ上位の壱越に係わる音程は、三分損益法で計算した305.8632を使う場合で示し、括弧の中の数字は下位の壱越のオクターブ上(300サバール)との音程を示した。階名欄の音程を計算する方法は表に続けて示してある。

律度

音名

階名

均分平均律の音程

文字

読み

音程

文字

音程

五線記号

音程

壱越

いちこつ

d

断金

だんきん

28.4202

変商

22.557

#d

25

平調

ひょうじょう

22.557

28.419

e

25

勝絶

しょうぜつ

28.4202

嬰商

22.5906

f

25

下無

しもむ

22.558

 

 

#f

25

双調

そうじょう

28.4129

律角

50.9448

g

25

鳬鐘

ふしょう

22.557

変徴

22.557

♭a

25

黄鐘

おうしき

22.557

28.4202

♮a

25

鸞鏡

らんけい

28.4202

変羽

22.557

♭h

25

10

盤渉

ばんしき

22.557

 

 

♮h

25

11

神仙

しんせん

28.4202

嬰羽

50.9769

c

25

12

上無

かみむ

22.557

 

 

#c

25

壱越

いちこつ

28.4202

(22.557)

(50.9775)

d

25

 

音程の数値は、音楽理論が規定する音の振動数から計算した。

音名欄については、音の振動数は三分損益法(順八逆六法)で決まるものとして計算した。三分損益法は、基準となる音(dと書く)から始めて、まずその5度上の音をとり(振動数3/2倍)、その結果の4度下の音を取り(振動数3/4倍)、その結果の5度上の音を取り、その結果の4度下の音をとる、という操作を定める。各音の振動数は(3/2)n(3/4)mdで決まる。奇数3を偶数2又は4で除して割り切れることはないので、三分損益法で決まる音には基準音dのオクターブ上の音はない。

階名欄については、芝祐泰編著、五線譜による雅楽総譜 巻一 歌曲編の8頁の構成図に従うものとして計算した。同書に拠れば、階名欄の音は次の構成手順によって構成される。この構成手順で決まる音の高さを使うと音程が計算できる。

  1. a) 五つの正声を次で構成する。

宮音を壱越とする。

宮音の5度上の音を徴とする。

宮音の4度上の音を律角とする。

律角の4度上の音を嬰羽とする。

嬰羽の5度下の音を嬰商とする。

  1. b) 二つの変声を次で構成する。

嬰商の4度上を変羽とする。

変羽の5度下を変商とする。

  1. c) 二つの臨時声を次で構成する。

徴の4度下の音を商とする。

変商の4度上の音を変徴とする。

以上

 

ところで、正声の五つの音の性質については次が参考になる。次の表は、岩田宗一「声明は音楽のふるさと」(法蔵館)、本文最初の位置に置かれた中表紙に置かれた写真から作成した。

 

呂 大由

十二律ハ 黄鐘管

笙    九竹

横笛   六穴

律ハ スクム

簫    六穴

琴    三八中絃

琵琶   工絃

呂 スクム

十二律  大旗管

笙ハ   乚竹

横笛ハ  千穴

律ハ ソル

簫ハ   四ノ穴

琴    ニ七為絃

琵琶   七絃

呂 スクム

十二律  中ロ管

笙    十竹

横笛   上穴

律 直

簫    ユ穴

琴    一二五十絃

琵琶   一絃

呂 大ユ

十二律  南呂管

笙    一竹

横笛   中穴

律ハ スクム

簫    ユ穴

琴    一五十絃

琵琶   ク絃

呂 スクム

十二律  林鐘管

笙    乞竹

横笛   タ穴

律 ソル

簫    五十穴

琴    六十絃

琵琶   乚絃

巳上図暫一越調之五音庄之

(上の図は壱越調の五音を示すものです)

 

表で宮商角徴羽は階名、呂と律は旋法の種類、三つ目の欄は(壱越調での)音の高さを楽器の構えで指定している。ここで呂律の欄に書かれた大由、スクム、ソル、などは、階名で指定された音が固有の修飾法をもっていることを示している。音は決まった高さに維持されるだけでなく、洋楽で言うビブラート風に揺れるように歌われることがある。それぞれの用語の具体的な歌い方は口伝で伝わるとしても、揺らぎがある場合にはとり得る音が指定されなければならない。結果として、5正声と、これに加えて2変声、2臨時声が必要になる。

 

声明関係の書籍に使われていた写真から作成したので、歌謡に当てはまるか否かについては別途確認が要る。しかし、一つの音に固有の修飾方法が決まっているという特徴は見て取れる。つまり、正声の五つの音は、五線譜の音符のように、高さ・長さ・強さを指定するだけでは特徴を指定しきれず、修飾法を合わせて考慮しなければならない。

読書(2)_語句の収集 階名と音名

しばらく自分用の用語集を作る作業をしてみよう。参考書としては次を選ぶ。

福井昭史、よくわかる日本音楽基礎講座、音楽の友社(2006年8月10日)[ISBN427630704X]

 

この参考書から語句を拾って単語帳の形に纏める。用語集が纏まると作文に便利になるが、それだけでなく、構成上、多少の工夫をしてみようと思っている。

 

原書は物(楽器)・上演が先で音楽理論が後の順に構成されている。楽器の調律を五線譜上の音符で説明しているが、日本の楽器を五線譜に記載されている音に調律するという理解は必ずしも正しくはないので、本書の順序とは異なるがまず記譜法から先に扱う。

 

まず、127頁の「神楽歌の音律構成」の表から表作りを始める。日本の階名と音名、及び対応する五線譜上の音名が一つの表になっている。

 

127頁の表「神楽歌の音律構成」から作表

律度

音名

五線譜の音名

階名

文字

読み

壱越

いちこつ

d

断金

だんきん

#d

変商

平調

ひょうじょう

e

勝絶

しょうぜつ

f

嬰商

下無

しもむ

#f

 

双調

そうじょう

g

律角

鳬鐘

ふしょう

♭a

変徴

黄鐘

おうしき

♮a

鸞鏡

らんけい

♭h

変羽

10

盤渉

ばんしき

♮h

 

11

神仙

しんせん

c

嬰羽

12

上無

かみむ

#c

 

壱越

いちこつ

d

上記参考書127頁の表は、芝祐泰編、五線譜による雅楽総譜 巻一 歌曲編8頁、壱越宮にて雅楽歌曲9声の構成図として掲載されている表と同じ内容をもつと考えられる。律度という用語はこの書による。

 

この127頁の表には下記の三つの誤解を招きやすい点がある。

・壱越以下の日本音楽の音名を五線譜の音名d、#d、・・に対応づけているが、音の高さが対応しているかのような印象を与える。実際には日本音楽の音名間の音程は三分損益法で決まり、平均律の音程とは異なる。

・壱越を宮におく構成法を示しているが、宮を壱越以外の音に置いてもよい。各音の構成法が決まっていて、音名毎に、その音を宮に取った場合の各階名に対応する音が決まる。

・日本の音階は5音音階と言われているが、階名が九つある。これは、日本音楽の音階を構成する音の特性に拠る。日本音楽の音階を構成する各音は、一定の高さを維持するものだけとは限らず、音の高さの揺らし方に固有の約束事が決まっている。この、音の高さの揺らし方が決まっている事から、音階でなく旋法と呼ばれる事がある。揺らし方を決める音は四つあり、九つの音から四つを除くと残る音の数は五つとなる。

 

これらについて説明を加えた文書をこれから作りたいと思っている。

メモノート公開用のフォルダを作ってみた

OneDrive試用を継続中。共有フォルダを作ってみた。リンクは次の通り。

https://1drv.ms/f/s!AtMSi1_sj0qqc7thzQlsgN0jibs 

ここには数頁のメモノートを入れて貯めておく予定。

 

慣れないクラウドであり、設定を改良しながら使ってゆくつもり。ただし、予想外の事情で管理できないと判断したら、その時には撤退します。はてさていつまで続けられるか・・

読書(1)

これからしばらくの間、読書の記録を作ってゆきたい*1

これまでいろいろな資料を浅いレベルで読んで、信楽メモなるものを作ってきた。これから本気で何かしようと思ったら、自前の道具箱に工具(ソフトウェアツールなど)を入れておくことになる。それも、目的に沿う工具をできるだけもっている方がよい。もちろん工具を揃えるには目的がしっかりしている方がよい。*2

 

伝統的な邦楽に係わる課題を参考書レベルの鳥瞰図で捉えるなら、伝統邦楽には様々なジャンルがあり、あれば便利そうなツールを想定することができる。

  1. a) 伝統邦楽のジャンル

- 上代歌謡、雅楽、声明、琵琶楽(語り物音楽)、能楽、三味線音楽、筝曲、三味線音楽、歌舞伎・・

  1. b) あれば便利そうなツール

- 伝統邦楽の楽譜を編集するツール、伝統邦楽の楽音を定義通りに再現するツール、伝統邦楽の楽譜を他の表現に変換するツール、文献資料の言語を現代標準語に翻訳するツール・・

実際に何かを始めようとすれば、鳥瞰図のような遠距離からの観察では済まない。

 

伝統邦楽の楽譜について考えてみる。

西洋音楽の常識に沿えば、楽譜は作曲家が演奏家に示す音の基準であり、楽譜の図記号には明確な意味づけがある。伝統邦楽の楽譜が示す内容は音の目安であり、音楽の詳細は継承者が口伝で伝える。従って、楽譜の図記号の解釈には(大げさに言えば)継承者の数だけのバラエティがある。

もっともこの違いは、西洋音楽と伝統邦楽との間で、音楽という言葉の意味づけが違ったために起こった現象であり、言ってみればボタンの掛け違いに過ぎない。

意味づけの違いに気付くために、「芸術」と「芸能」の関係に注意する。Wikipediaによると、「芸能」とは「芸術のうち、身体表現を手段とするもの」をいう。伝統邦楽で音楽は芸能であり、演奏者に主体性がある。西洋音楽で言う楽譜は作曲家が示す音の基準であり、この基準に基づいて演奏家が実現した音が、耳にする音楽ということになる。大切なことは、演奏家は楽譜に拘束されるのではなく、作曲家が示したはずの音に拘束される、ということであり、楽譜を一字一句違うことなしに演奏している訳ではない、ということである。つまり、演奏家が演奏している音を楽譜に取れば、一つの曲から演奏家毎に違った楽譜ができる。

 

伝統邦楽は演奏の目安であることを考えると、伝統邦楽譜の構文と意味とを電子化しようと思えば、継承者の意見を聞く事が不可欠ということになる。しかも、一人の継承者の意見を聞くだけでは終わらず、関連する継承者全員の意見を聞かなければならない。その上でできれば、西洋音楽の五線譜の意味づけに近い、ある曲であるために満たされるべき音の基準を示す譜が見えてくることが望ましい。

これを考えると、伝統邦楽に関する研究を行うには、やはり指導者につく事が必須条件ということになる。そうなると、一介の好事家の立場から見て、資料にアクセスし関係者の指導を仰ぐという壁は高いものと思わざるを得ない。一つの考え方は、筆者に多少なりとも縁がある真言宗の声明を対象に選ぶということだろうか。

 

もっともその前に、自分の工具箱に必要な道具を集め、使い慣れるところから始めなければならない。

伝統邦楽の音楽用語には特有の漢語があり、楽譜記号には特有の図記号がある。特有の漢語は辞書を作っておくと、かな漢字変換の労を軽くできる。

楽譜記号は図記号を設計しておくと文書中に引用し易い。また、先に進んで、楽譜記号が指す意味を継承者と対にして収集する際には基本的なデータとなる。

さらにその先には、音楽理論を理解し、音楽を再現するという話題が見えてくるはずなのだが、その大変さに気付くにはもう少しその現場に近づく必要があるのだろう。

*1:しばらくしたらOneDriveにも載せます。

*2:最近、電動ドライバを使っていくつかの工作をしたことがあり、たかが木ネジでも、硬い木材に何かを止めようと思ったら手作業では歯が立たず、電動ドライバなしでは済まなかったことがあった。