狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

清められた夜

しばらくDTMの話が続き、前回までで風呂敷は広げた。あとは、外国文化を輸入するときに交換する情報をひたすら溜めて行く段階にはいり、ということは毎日書ける程の話はそう簡単には出てこない。ということで、日記帳は、輸入する方の話に方向転換する。

CDなどで歌曲や民謡を聞くときに、聞くだけで終わってしまうのももったいない話で、しっかり聞いて編曲して、機会があれば演奏して見ると面白い。外国産でなくとも、はやりのアニメの主題歌など演奏すると、案外子供が喜ぶ事がある*1。そこまでやらずとも、歌詞カードがあれば聞きながら見ていると、歌詞と意味とを捉えることができて、歌いやすくなる。そんなことから、歌詞カードに対訳がついていても、あえて自分で翻訳を試みることがある*2。時に意外な発見をしたり、どうしても途中で眠くなる音楽が最後まで聞き通せたりすることがある。

ちなみに、意外な発見の例。

「サントワマミー」は原語では”Sans toi, m’amie!”で、直訳すると「あなた無しでは、私のひと!」になる。フランス語の性質上m’amieはガールフレンド限定なので、今流通している日本語の歌詞にこの直訳をそのまま割り込ませるとその前後で意味が衝突する。

それはともかく。

 

以下、シェーンベルクの「清められた夜」(作品番号4)についている詩の翻訳例を挙げる。この曲、シェーンベルクの初期の代表作ではあるが、30分を越える長さと一寸特殊な構成をとっていることとから、放送で最初に聞いた時には途中で寝てしまった*3。しばらくして楽譜を買って、楽譜を追いながら聞いて、全曲を寝落ちせずに聞き通したのだった。

この曲にはデーメルの詩がついていて、曲は詩の展開に沿って進む。こういう構成はビバルディの四季という例もあるから、独自という訳ではないにしろ、従来の形式を予想して聞いていると次を予想しにくい。デーメルの詩はドイツ語で、信楽さんには手が出ないので、英語訳の方を訳してみた。訳してみると、曲の展開が納得できるようなきもしたのだった。

 

「変容の夜」*4

 

魂の抜け殻が二つ、冷たい不毛の世界をさまよっていた。

月は背の高い樫の木を照らし、

雲ひとつない月の光を受けて、木々はやせこけた枝を一杯に広げていた。

 

彼女は言う。

私、。。いけないことをしてしまった。。。

子供ができたの。。でも、。。貴方のじゃない。

 

私、。。幸せが見えなかった。。。

それで、。。母になること、母であることを求めて満ち足りようとしていた。。。

だたら、。。私、。。知らない人に抱かれたの。

 

私、。。幸せだと思っていた。。。

でも意地の悪い運命は、私を貴方と出会わせて、。。

私、貴方を愛してしまったの。

 

彼女は何かに耐えるように、輝きのない瞳で、

彼女を照らす月光をじっと見つめていた。

 

彼は言う。

もうよそう、心の中に罪の想いを負うのは。

ご覧、月の光は全てのものを包み込んでくれる。

 

この月の輝きの中で冷たい水を押し流そう。

そして僕と君の暖かさで火を点そう。

 

この火は見ず知らずの小さなものの姿を変えて、

私と君のものとして、子供を授けてくれるだろう。

 

彼女は彼の中に輝く、成長する何かを見た。

彼も、眩しいものにつつまれた子供を見た。

二人は互いに相手を引き寄せ、

抱きあうのだった。

 

二人の命の息は口付けによって出会い、

二つの魂の抜け殻は素晴らしい月の光に照らされて、

変容を遂げるのであった。

 

R.Dehmel Verklaerlte Nacht

Paraphrased by H.Krehbiel

*1:信楽さんはドラえもんで経験済み^^。

*2:あえて自分で訳してみることが大切。

*3:なにぶん夜遅くだったこともあって。

*4:Transfigured Night、「変容の夜」という訳もあるようです。