狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

はじまりはじまり~(^ ^)ノシ

ここにはいろいろなカテゴリの創作文書を収めようと思っています。初回は短編小説もどき。

 

夕暮れの街角(1) 臨死体験

 

俺、田貫。今だから言えることだが、駆け出しだったころにとても奇妙な体験をした。

 

都会の某所にはれて入社してすぐに、入社した部署ごと山奥に移転になってしまった。まあ、何にもない所に移転になってしまったので、せめて年末・年始は盛大に祝いましょう、ということで、移転早々、部署総出で(といっても、20人いたかな)車でン十分というところにあるレストランで部員総出の盛大な忘年会があった。その時に食べた生牡蠣がなんか変な味という気もしていたのだが・・・

 

その晩、気がつくとどうにも体調がおかしい。起きているのか寝ているのかも判然としないし、なにより暑い。しかも、どうにも、何も口に入らない。暑いから水でも飲んで冷やそうか、夜食にパンでも齧ろうか、と、ちょっと何かを口に入れると、直後に強烈な吐き気が襲ってくる。仕方がないので床に就いたのだが・・・

 

次に気がつくと、見ず知らずの川の淵に立っていた。どこだろう、あたりは深い藍色に染まっていて、川の中はぼんやりと光っているように見える。覗き込んでみると、小魚を引き連れた円盤みたいな奴、深い方でちょこまかと底をつつきまわっている奴、浅い所で水面から飛び出しそうな勢いで泳いでいる奴、見たこともない連中が、水草の周りを泳ぎまわっている。

 

渡し船が待っていたので、乗り込んでみた。しばらくすると、船頭が知らない言葉で合図をして、船が船着き場を離れた。川の半ばで、誰かに呼ばれたような気がして、暑くて冷ましたくもなって、落ちるように飛び込んだ。どこかから「危ない、生きるぞ!」という声が聞こえたような気がするが、水の中故よくわからない。船頭はあわてたようでもあったが、仕事もあってか、そのまま船はどこかに消えていった。俺はどんどん川底に沈んでゆく・・・

 

川底に着いたのだろうか、体が横になった。意外と明るい。それに、何か物音が聞こえてくる。目をあけると、俺はベッドに寝ていて、目の前に寮の管理人さんがいた。聞くところによると、設備の点検で偶然俺の部屋の前を通った時に物音で異変に気がついて、病院に搬送したのだそうな。あと少し遅れていたら、大変なことになっていたかもしれないという。

 

それにしても、それからの治療には意外と長い時間がかかり、移転早々、さあこれからという時期に重なったことと併せて、それからしばらくの間、焦りを抑えながらの療養には死ぬ思いをした。