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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

ジグソーパズルのような体験

この情報民族音楽学というキーワード、今まで、ジグソーパズルのピースが組みあがらないまま放置されていたような状態だったのだけれど、ここ数日で組み立てられるような気がしてきた。

情報民族音楽学というキーワードは、こんなピースからできている。

1) 情報科学の領域に新しい研究分野を拓く基となるもの

どんなに豊かな領域でも掘りだし続ければいつか枯渇する。新しい課題を提供してくれる分野を探し、記録する活動はいつでも必要。

2) 人文科学系の領域における情報技術

既成の情報技術をうまく使うのでなく、人文科学の領域での問題意識に忠実な情報技術を創成する。新しい課題を見つけることに留意する。

3) 人文科学系の領域における文書資料の扱い方

関連する分野は書誌学。印刷物の保管と利用、イメージデータ形式に変換した文書資料の管理と閲覧、テキストデータ形式に変換した文書資料の管理と閲覧、語句の出現頻度解析、N-gram解析、タグ付きテキストの作成・管理と閲覧

4) 情報民族音楽学

関連する分野は、民族音楽学における採譜。声の物理的特性を捉える特徴量を使った音楽の記述

採譜と言う用語は、民族音楽学の意味では、音楽の仕組みを再現する資料作成作業として位置づけられる。この作業は、音の特徴量に閾値論理を適用してできるものではなく、手段として閾値論理を使うにしてもその閾値は文献的な裏付けを以って選ばれなければならない。つまり、項目3と項目4とは密接に関連している。ただ、従来の(概論レベルの)民族音楽学の文献では音が主体になり、文献資料については研究者の経験に任されている。

他方、項目3の活動では、テキストデータ化が主体になっており、カリグラフィ*1、楽譜や図面*2などは、少なくとも入門段階の書誌学の話題にはない。

つまり項目3と項目4とを関連づけようとすると、現状ママでは少数意見の組合せになってしまう。

言ってみれば、ジグソーパズルのピースが組まれていないまま放りだされた状況であり、ここで組み合わせる必然性を言うには、情報技術を導入するにしても、それなりの根拠が要る事になる。結局、項目2を真剣に考えることになる。そこでこんな事を考えてみた。

 

*3と墨による手書き文書は仏教伝来の頃からごく最近まで使われ続けており、その関係から、日本国内にはたくさんの文献資料が残されている。これらは最近、印刷頁を画像データ化して、インターネット上で閲覧できるようになっている。この画像データを基礎資料として、画面上で特徴量を計測しながら、研究活動が実施できないか。

文献資料をテキストデータ化する作業にOCRを使う試みは、もうかなり前から行われていると聞いた事がある。OCRは紙→テキストだけれど、イメージデータ→テキストは、技術としてはほぼ同じだろう。画面上で、OCR機能を適用し、結果を校閲するのはそれほどギャップがあるとも思えない。

これができると、項目1に戻って、次のような活動を行う研究分野が開けてくる。テキストデータ化までを計算機上で行えれば、語句の出現頻度解析、N-gram解析、タグ付けなどを続けて行う作業プロセスに展開するのも容易だろう。さらには、楽譜や図面の取り扱いについても、道筋が見えてくるのではないか。もちろんそのためには、ICTのための情報処理技術がもつ「変わり身の早さ」が、研究活動の基礎となる文献資料(のデータ)に要求される「長期に渡って*4有効性が保証されなければならない」という要請と衝突しないようにするためのセーフガードをどう作るか、という基本的な課題が出てくる訳だが。

それにしても、国内には、旧家の蔵から多量の古文書が見つかるなど、文献資料がむしろありすぎる状況にあり、これらの収集・整理が追い付かないと聞いたことがある*5。文献資料を画像データの形で公開し、これを閲覧しながら研究活動を進めるスタイルが定着すれば、いつか、現在は仮説とされている件*6を検証できる資料が発掘できることもあるのではないか。

 

もともとこの日記は、このジグソーパズルを組み立てるための試行錯誤を記録するために始めた。パズルが組みあがってそれを書きとめられれば目的は達成したので、そろそろ研究者もどきの活動もお終いにしようと思っている。

追記

これまで「情報民族音楽学」という用語を使ってきた。項目3「書誌学」と項目4「情報民族音楽学」とを比べると、項目3の方がカバーする範囲が広い。そのため、項目3と項目4とを合併する用語として(活動を示す用語として)情報民族音楽学という用語を不用意に使うと、内容を誤解される可能性がある。そこで以後、電子化資料を対象とする書誌学を表す用語として、例えば「構造書誌学」という造語を使い、まずここから始めて、楽譜を対象とする実践の場として楽譜資料を対象とする情報民族音楽学を考えることとしたい。もちろん、ここでいう「構造」は天与のものではなく、研究の結果として仮説として得られ関係者の承認により確定するものだから、構造書誌学と言っただけでは誤解を招きかねないものではあるが。いずれにしても、項目3+項目4=構造書誌学→(情報民族音楽学、・・)と展開することになる訳だが。

*1:例えば不思議の国のアリスに出てくる「蛇の形をした蛇の詩」のように、テキストをその内容を示唆する形にレイアウトしたもの。

*2:寺社・城郭などの建築には関連した図面があるのではないか。

*3:狸の毛は毛筆のよい材料になるのだとか・・

*4:半無限!

*5:テレビのニュースだったと思う。要検証だが。

*6:古い時代の日本語の形とかの。