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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

FM-現代の音楽 (2)

先週に引き続いて湯浅譲二さんがゲスト。とはいえ、信楽さんは現代音楽をかつてはよく聴きはしたが、専門的な訓練を受けたことはない。勢い何かを書くにも一般的な感想になってしまい、書き始めるところで立ち止まることになる。そこで、それなら開き直って全く個人的な感想を書こうかと思う。

 

放送の中で湯浅さんが、五線譜でなくグラフを使って作曲するという話をされていた。これはもちろん拍節という縛りのない音楽を書くためではあり、電子音楽を考えるなら自然な道具立てとしても、五線譜を前提に考えると変わった作曲法と見える。でも、前々回にちょっと書いたとおり、音符の代りに曲線を書いた楽譜というものは西洋にもあるし、伝統邦楽で声のパートを書く方法としてはむしろ標準的とも言える。

声明という仏教の声楽では、歌詞の脇に声の抑揚を示す曲線が書いてある。この曲線90度左に回して歌詞と平行に書いて、全体を横書きすると、声のパートを書く曲線譜ができる。いつだったか、こういう、曲線で声のパートを書く譜をグラ譜β(^ ^)と呼ぶといいのではないかと思った ・・ というのは冗談としても。

もちろんグラ譜は数学のグラフではなく音楽の譜なので、縦軸・横軸には音楽に固有の事情を反映した仕様がつく。伝統邦楽の場合、横軸は旋法(五音音階のこと)の主要な音を示し、曲線は声の抑揚及び小節の付け方を大まかに書いてある。

現代音楽の創作に使うグラフというものを見たことがないので*1どういうものかは想像するしかないのだが、創作上必要な指定になっているはずである。

 

放送のあとでWikipediaを牽いて見るとUPICという作曲用コンピューターに関する記事があった。このUPICの記事を読みながら、ここしばらく考えて来た情報民族音楽学との関係を考えてみた。以下に纏める。

  1. 目的

・UPICを含む作曲用のコンピューターシステムは、創作者の自由な発想を受け止めて音を制作することを目的とする。

・情報民族音楽学では、目標とする音楽を、音楽の様式に忠実に再現することを目的とする。

  1. 構成

情報民族音楽学のためのコンピューターシステムは、作曲用のコンピューターシステムが受け止めることのできる自由度を制約して、目標とする音楽の様式を忠実に再現するための仕組みを実現する*2

  1. 特徴的な構成要素

・目標とする音楽の様式を忠実に再現するために必要かつ十分な、目標とする音楽を特徴づける情報をもつ。

・この情報は、より精度の高い情報が提供されるまで有効である。従って、この情報は、コンピューターシステムの実装の世代を越えて維持され、目標とする音楽の様式を忠実に再現するために利用され続ける。

 

情報民族音楽学は、言ってみれば、こういう特徴をもつコンピューターシステムを実現し、目標とする音楽を特徴づける情報と組み合わせて、目標としている音楽を伝えるための活動を行う、情報科学の一部門ということができるだろう。 ・・・ という風呂敷 ・・・

 

最後に蛇足。さすがに前回・今回の放送で触れられることはなかったけれど、湯浅譲二さんと言うと、NHK連続テレビ小説藍より青く」のテーマを思い出す。「耳をすませてごらん」の伴奏など、深い藍色の音色と言える感じが気にいっていたのだった。ただ、音があまり精密に設計してあると、地方巡業には重いかな・・などと思ったこともあって。ラジオ放送で耳をすませてごらんを聞いた時に、伴奏が金管主体で、とても歌いにくそうに聞こえたことがあった。といって、ある曲のためだけに伴奏を編成するのは多分難しい。

*1:もしかしたらカルコシュカの現代音楽の楽譜に何か載っていたかもしれないのだが、この本は譲渡してしまって今は手元にない。

*2:プログラム言語の比喩で言えば、作曲用のコンピューターシステムを汎用プログラム言語に、情報民族音楽学のコンピューターシステムはドメインに適合したプログラム言語に、それぞれ対応づけてもよいのではないかと思う。