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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

一言でいってそれは何?

狸系の目

情報民族音楽学というアイデアに拘泥していた期間、「一言でいってそれは何?」に納得のゆく答えを捜していた。自分がやります、と宣言するためには、ひと目見ただけで意味がきちんととれる標語を作りたい。有名な先生に弟子入りして標語を借りて、手取り足とり指導を受ければ迷いは回避できるとはいえ、それでも結局最後まで悟りが開けないこともある。

標語を作る事は結局、自分が価値を置くものは何か、という問いかけに答えを用意することになる。「自分が価値を置くものは何か」という問いには自分以外の誰も答えられない。

最近、下の図を考えて、情報民族音楽学という用語にsuccessive musicologyという訳語を対応させた。このモデルに納得したので、この内容で落ち着こうと思った。

この図は次のように読む。先代からは文化的な何かを継承する。このときに、この何かをまずはありのままの形で受け入れる。この受け入れた何かをよく咀嚼し、地域・時代の要請、受け入れ者の意思(複数の選択肢のどれを取るかなど)などを要因とする創意をこの何かに加える。この「咀嚼し創意を加える」プロセスは試行錯誤的に行うことがあるので、ある時期に整理が行われ、結果が次の世代に送られる。これは一般的な図に過ぎないが、次のように具体化する。先代と時代とはある基準で選んだ音楽資料の集合とする。この音楽資料の集合は、一つの音楽資料を次の要素で構成する。

・音響パラメータ系列

・音響パラメータに音階の高さを示す情報、音響パラメータを音符に区切り出す情報、音符の並びをフレーズに区切りだす情報他を追加して楽譜に近い形をもたせたデータ

・五線記譜法に対象とする音楽に固有の現象を書くための記号を追加した、楽譜データ

・相互の対応関係

こうすると、当代の所で実施した創意を、音楽資料を使って追跡できる。*1

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このストーリーの趣旨は、対象とする音楽に忠実な基準を使って対象とする音楽を記録する、ということにある*2。五線譜には決まった調律、決まった音の長さがあるので、この決まりから外れる基準をもつ音楽が記録しにくい。無理やり書けば、対象が必要以上に複雑に見えるものになる。例えば話し言葉をそのまま五線譜に書いてみてほしい。

前に民謡の教室で使っている譜面を見せてもらったことがあって、歌の高低の抑揚を横線なしで曲線に書いてあり、曲線に沿って歌詞が書いてある。*3こういう譜面を見ていると、譜面という言葉から感じるイメージをもっと多様に、もっと豊かに、とおもうことしきり。

 

ともあれ、必要以上に難しい書き方が、技術が無いからという理由でそのままになっていたら、継承を考える上ではあまりよい状況ではない。伝統芸は芸能だから*4、芸を管理する責任者が問題としていなければ外から注文をつけるものではなく、また情報技術の目で見るとなかなか難しい案件だとしても。

 

ところで蛇足。

個人営業では大それたことはできないが、余裕があれば勝手なことができる。上の継承図式を民謡の移入に応用しようとは昔から思っていて、学生時代にはハンガリーフィンランドを候補に考えていた。これは、民謡が豊富にあり国内にはあまり紹介されていないように見えたからなのだが、さすがに現在ではこの両国の紹介は充分に行われている。

紹介が充分に行われているということは、新規に始める際に要求されるレベルが上がる*5。だからという訳でもないけれど、最近、エストニア*6の言葉と科学・音楽文化に興味を持ち始めている。

*1:あるいは、そうできるように音楽資料を構成する。

*2:そうすると、対象とする音楽が従う基準が判っていないといけない。対象としている音楽が従う基準は最初は判らないので、仮説として作ることになる。この作業は意外と難しい。一曲だけ分析してもたまたまその曲が従っていた基準かもしれず、ある個数分析してもその録音を行ったコミュニティがたまたま従っていた基準かもしれない。仮説として作成した基準があるコミュニティがたまたま従っていた基準であったとしても、後から参考資料として参照することはあるので、有効性が失われるまでは閲覧できるようになっていてほしい。その期間の目安を一人の研究者の活動期間と思うと、資料は半世紀程度参照できてほしい。また、音だけではなく、音楽について書かれた文献にあたるなどする必要が起こることもある。情報技術にはこの辺りまでサポートして欲しい。

*3:高低を示す横線が書いてない理由は、歌い手がキーを選べるから。

*4:芸能では、作曲者は表には出ず、芸というある纏まりの一部として音楽がある。

*5:もう済んでいる紹介をいまさらやっても、という話。

*6:フィンランドから見て対岸にある。信楽さんの理解では、現在のフィンランドエストニアからフィンランドに移住した民族が基になっていると思っていたので、某サイトで見た「エストニアフィンランドのコピー」という表現には違和感をもった。