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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

FM-現代の音楽(ノーノ Ⅰ)

FM現代の音楽を今週も聞く。

 

今週は現代の音楽を聴く時間が出来たので、感想などを。

HPの解説に拠ると、今日の放送は次の通り。

7月5日と12日にはルイージ・ノーノ(1924-1990)を取り上げる。ノーノは戦後のイタリアを代表する作曲家であり、イタリア共産党員でもあった。ノーノは、作品に政治的な主張や社会に向けた強いメッセージを込め、独自の道を歩んだ。

7月5日には次の3曲を放送する。

1) 「愛の歌」、(指揮)クラウディオ・アバド、(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、(合唱)ウィーン・ジュネス合唱団

2) 「断ちきられた歌」、(指揮)クラウディオ・アバド、(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、(ソプラノ)バーバラ・ボニー、(メゾ・ソプラノ)ズザンネ・オットー、(テノール)マレク・トルツェフスキ、(合唱)ベルリン放送合唱団

3)「エミリオ・ヴェドヴァをたたえて(テープ音楽)」

 

第二曲「断ち切られた歌」については、音楽芸術誌1968年6月号と8月号とに掲載された分析記事をとおして楽譜と作曲法とをみていて、音についても一部は放送で聞いたことがある。今年から数えてもう半世紀近く前になる。

トータルセリエル作曲法という手法に従い、曲に現れる音の、高さ、長さ、強弱を予め数列として符号化して、その数列の順序で音の属性を決めて楽譜に置いて作曲する。と書いてしまうと計算機プログラミングの演習問題みたいにも見えるが、曲の構成を考えて数列を決め、取り出し方を決めているので、乱数を振って決めている訳ではない。分析記事の見かけと違い、演奏では抒情的な音色を聴かせている。

音楽を音符から一つの楽章までの階層をもつ構造物としてみると、昔のソナタ形式なら、モティーフ、テーマ、フレーズ、提示部、展開部、再現部などの中間的な構造物があって、曲の表現の一端を担っている。現代音楽では、この、中華的な構造物が捉えにくく*1、新しい響きが突然現れるという印象を受ける。

順番が逆になったが、第一曲は、ウエーベルン風な12音技法による音楽、第3曲は具体音によるテープ音楽。放送では、『工場の労働を連想させる音』という紹介があったが、そこまで具体化すると音楽の表現の幅が狭くなるのではないかとも思った。*2

 

それにしても、これから50年後に、20世紀中盤の現代音楽がどのように継承されているだろうか。20世紀は工業と信念とが主導する世紀であったと考えると、工業を盾にとった信念と信念との衝突が多発し、思ってもいなかった災害が発生した次代、災害を目前にして自信を喪失した時代であったとも言えるだろう。この自信の喪失からの「自由を求めて」何かをしなければならないという思いからの動きもまた、いろいろな形をとって現れた時代と言える。現代音楽が「今まで聞いたことのない新しい響き」を求める背景にはこんな想いがあったように思う。

この思いはしかし、現状を否定しさえすれば何をやっても達成されるというものでは少なくともない。「~でなく」というなら「~でなければ何でもよい」ことになる。*3

ここで集合論の用語を借りる。「~」を満たす集合をSと書けば、「~でなく」とはSの補集合であるが、Sの補集合とは、「およそ集合とよべるもの全てからなる集まりからSだけを除いたもの」となる。「およそ集合と呼べるもの全てからなる集まり」は、それを集合と呼ぶと矛盾が起こる、集合というもののつくる集まりの一つ上にあるものとなる ・・・ 

「~でなければ何でもよい」とすると、その中には予想外の集合が入っているかもしれない。数学では、そんなに巨大な対象を扱いたくない時には*4、充分に大きな集合*5を一つ取って、その集合の部分集合を集合として扱う事になっている。

この節のはじめに戻って、この集合の言葉に関する説明を「~でなく」という言葉の解釈に関連づけるなら、「~でなく」という言葉を使う時には必ず事前に、集合Uについて定義を合意しておくということになる。*6

音楽の話に戻って、今まで聞いたことのない響きを追及するなら、想定している音楽表現の範囲がもう少し明確にならないかなと思う。素人的には、聞いていて作風の違いが判らないことがあるので・・

*1:多様過ぎる?

*2:具体音の音楽はそれでいいのかもしれないのだが。

*3:英語の文型に”not A, but B”があるが、これを喩えに使うと、”not A”だけでもなく、”not A, but someone like B”でもなく、”not A, but B”と言えるものであってほしい。

*4:普通に集合論と言う時にはこちらを使う。

*5:Uで書かれることが多い。

*6:事前の合意が取れなければ、合意が取れるまで、Uの定義について話し合う。