狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

音楽を知るための採譜

音楽の聴き方には、音響現象を知覚する聴き方と、その場の約束に従って音響現象が運ぶとされる内容を理解する聴き方とがるようだ。*1この二つに対応して、音楽を記録する方法には、音響現象を記録する方法と、音響現象に加えてその場の約束を記録する方法とがある。

 

一般的な意味で言われている採譜を次の図式で表すと、この採譜の結果として、特定の記譜法を使って記録された音響現象像が作られる。

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音響現象が運ぶとされる内容の記録まで配慮した意味での採譜では、この図に次の追加修正が必要になるだろう。

 

まず、音楽音は単なる音響現象の記録ではない。

その場の約束に関する資料が対応づけられている。この、その場の約束は、全体像が明らかになっている保証はないとしても、音楽音を作りだすメンバー(演奏関係者)は全員理解していると仮定する。この理解に基づいて演奏が行われる。

採譜手順で使う音楽理論は単一のものではない。

帰納的な仮説と考えるべきものであり、音楽音に対する説明の確からしさに応じて、複数のものを区別する。少なくとも、発生する頻度の高い現象を説明するための理論と、演奏者が維持し従っている理論とがある。前者は音楽音を統計的に分析して求める事ができるものであり、後者は文献・口伝などによって継承されるものである。この両者は必ずしも一致しない。

 

音楽音の集まりに過去~現在~未来の区分を入れると、音楽音が従う理論は過去~未来に渡る全域について、音楽を説明する。この意味では、「音楽の理論」を具体的に書くことはできない。

可能な事は、現在に注目して、過去から渡されるものを受け取り、受取ったものを咀嚼し現在における条件を考慮して様々に展開し、結果を整理して次世代に引き渡すことだろう。

このステップを音楽の継承と呼ぶ事にすれば、情報民族音楽学は、音楽の継承に係わる諸問題を解決するための情報技術を提供する役割を負うと考えられる。

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*1:コンサート会場でペンライトを振るのもその場の約束に従った動作と考える事にすると、一斉にペンライトを振る聞き手は、音響現象を知覚する聴き方でなく、音響現象が運ぶとされる内容を理解する聴き方をしている事になる。