狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

速読三題

手元にあった本を三冊読み返してみた。

TeX for Windows システムガイド (インプレス

‐ 音声工房を用いた音声処理入門 (コロナ社)

‐ 声明は音楽のふるさと (法蔵館

 

はじめの二つはずいぶん前の本で、技術的内容を見るつもりで読んだ訳ではない。むしろ使い方のイメージを見たつもり。

TeXというシステムは、文書を作る文字の列を、ゴム紐で繋がった単語カード(糊と箱、と呼ぶのが正式)のように把握する。頁の折り返しの幅で、単語カード同士が繋がる間隔を調整して、行を清書する。伝統声楽譜には、歌詞と抑揚指示記号の並びと、二つの独立した流れがある。この二つの流れは、文字の脇に櫛状に表記する流儀(例 催馬楽譜)と、並列に表記する流儀とがある。こんな構造をどう表現すればいいか・・?

音声工房は、線形予測分析法を使った音声分析をサポートする。線形予測分析・合成法は信楽さんも使っていたので、一応、システムの使い方を書いた行は裏まで見通しが効く。分析を実施する際に、分析精度を落とさず分析するための分析条件設定に関するノウハウ的な数字があり、これは面白いと思った。技術に基礎段階と発展段階という区分を付けるなら、入門という表題通り、基礎段階について纏めている。

信楽さんは一時、伴奏と一緒に記録されている音声資料の取り扱いを検討したことがある。こういう条件の悪い資料の取り扱いは、発展段階になる。今は何か方法があると聞いており、基礎段階にまで降りてきている?もう一つ、線形予測法は音声スペクトルの山に敏感で谷には敏感ではない。こういう特性が、分析結果にどういう影響を与えるか(区別したい声を、分析結果から区別できるか)という、精度の問題も、発展段階にはあるのだろう。*1

声明は音楽のふるさと[ISBN978-4-8318-6214-3]は、以前から捜していた本であり、丁寧に読むことにしている。それだけに、本筋でない部分で引っかかったりする。これはちょっと惜しい。

本書に限らず、伝統邦楽分野の本には説明の都合上、西洋音楽と比較することがある。ところが音楽という言葉の意味が、最近の商業音楽を含めた意味での日本音楽と西洋音楽とでは違うようなので、喩えを引いた所で引っかかってしまう。

日本音楽では音楽を、舞台で上演されたものを指して使うように見える。西洋音楽では、音楽を、作曲家の創作物を指して使うように見える。この違いは、楽譜という言葉が指すものに端的に現れる。

西洋音楽では二種類の楽譜を区別する。一つは印刷公開される楽譜、もう一つは、印刷楽譜のイメージを使えば、演奏家が自身の演奏計画を注釈として書きこんだ楽譜。後者は、演奏家が一人一人、演奏する準備の段階で作るものなので、めったに印刷公開されることはない。それでも、演奏に関するワークショップの配布資料の形で印刷されることがある*2。日本音楽の人が言う楽譜は、後者の、演奏家が自身の演奏計画を注釈として*3書きいれて、ある公演を完全に表記したものを指すように聞こえる。この違いが、前の方で、音楽を作品と捉えるか、公演と捉えるかの違い、と書いた内容であり、同じ音楽を違う意味で使うからどうも話がすれ違う*4

 

それはともかく、音なら国境なしにどこでも聞けるから紛らわしいのだが、音楽のように、地域と時代で様々な意味に使われる言葉は、往々にして、独自の意味付けがされていることがある。不用意に言葉を使わないようにするには、面倒でも次の準備が要るのではないか。

‐それぞれの音楽をそれぞれの語彙だけで完全に書きとめる

‐それぞれの語彙を対応づける規則を創作する*5

‐音楽を比較するときには、合意の取れている規則のみに基づいて比較を行う

 

音楽を聞くに国境を意識することはないが、音楽を聴くには国境を意識することになる。

*1:昔はこの辺まで気を配る余裕がなかったので、今から思うといい加減な扱いをしていたのだったが^^;。

*2:例えば、NHK趣味百科、ショパンを弾く、講師シプリアン・カツァリス、平成5年1月~3月。演奏の指針が書きこまれていて、具体的な内容は講師が示す。

*3:微に入り細をうがって

*4:音楽を公演と考える以上、「売り上げ第一位の名曲」という言葉に無理はないのかwww

*5:この規則は人工的であり、規則を使う関係者間での同意が要る。