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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

60年目の卒業

日本語はどこからきてどこに行くのかを明らかにするというテーマ*1は、高校のころから、いつかこれを手がけたいと思っていた。肝心なところを説明する言葉がなかなか見つからなかったこともあって、結局在職期間中には手がつけられなかった。暦が一回りしたのを機会に考えなおしてみると、このテーマが朽ちそうになっている。せっかく考えたものが誰にも気づかれることなく消える事だけは避けたい、ということでここ数年、メモ書きを残そうと画策してきた。

今見直してみるとこのテーマ、ある時以来、伝統邦楽に関するテーマであるかのように説明いる。本人もそのつもりになっていたので、肝心の日本語系統論とのリンクが意識の中で切れてしまっていた。

最近この失われたリンクが今更ながらではあるけれど見つかった*2

このリンクで日本語の系統論という着想を伝統邦楽譜の情報処理に繋げて、通してみた時に納得のゆく地図が書ければ、これでようやく、一つの区切りを達成したことになる。ある意味、還暦が卒業になったと言うべきか。

 

信楽さんが日本語系統論に興味を覚えた始まりの始まりはさすがに覚えていないのだが、多分最初はハンガリーの音楽の話から入っている。ハンガリー人の姓名の順が日本語と同じだから、西欧の書物経由で入ると姓名の順が逆になることを見つけてから*3、日本語に似た外国語があるということに興味を持つようになったのだろう。そうはいっても、ハンガリー語はウラル語系だけに、単語の形が英語などとは全然違う。特に動詞の変化形が一種独特で、マスターするには一寸根気が続かなかった・・ ただ、競争相手も〆切りもない気楽さもあって(^o^;)、いわゆるウラル語系の言語を話す地域の音楽・科学文化には興味を持ち続けている*4

 

それはともかくとして、せっかく見つけた強文化圏仮説ではあったけれど、これを以てしてもやっぱり良く判らない点が残る。強文化圏から影響を受けた言語はどのように生まれ、どう成長してきたのだろうか。

言語が与える影響は、強弱を尺度に測るとしても、今の強弱ではなく、関心がある当時の強弱関係で影響を与えあう。例えばロシア語の所有表現は名詞に前置詞Уを置くが、この表現はウラル語の所有表現に並行している。言語に与える影響を考えるならば、個人的には、強文化圏という存在は、既に形成されていた交易ネットワークを通して人とものの流通が行われた結果として出来あがったものという気もする。

結局、日本語系統論に何かの形で係わるにしても、まず必要なことは、信頼できる資料を閲覧し易い形で整理することだろう。信頼できる資料は時に世界でそれ一冊の本*5、ということもある。こういう本は往々にして、頁一枚をめくっただけで紙が壊れそうな位に脆弱化していて、保存には多くの努力が払われている。こういった資料を閲覧し易い形で整理するには、電子的な写本を作り、議論の焦点を示して仮説を書き加える作業を助ける仕組みを支えにするとよい。こういう所には情報技術が活動する場所があるだろう。

こういう背景を、きちんと根拠を示して説明できれば、また別な反応があったかもしれない。まあしかし、過ぎたことは仕方ないので、ここまで確認したことを結果として、伝統譜の電子化というテーマからは卒業しよう。

*1:日本語系統論

*2:中本正智、日本語の系統‐強文化圏から見た日本語の形成、ユリイカ 1984年11臨時増刊 118頁~131頁、128頁に琉球音階について触れている。

*3:リスト フランツ(フェレンツ)がフランツ リストになるように。

*4:趣味ですと言ってフィンランド語やエストニア語について話すとちょっと困ることがある。北欧語という言葉は極めておおざっぱに言うと北で話されているドイツ語系の言葉を指す。ということで、ウラル系のフィンランド語やエストニア語とは全然共通点がないのだけれど、なかなか判ってもらえないことがある。

*5:原典が。原典からの写本が見つかることがあるが、写本には書き写し間違いが起こり得る。だから原典が大切で、それは一冊しかない、という状況。