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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

情報民族音楽学の課題

情報民族音楽学は、音響パラメータを使って特定の音楽ジャンルに依存しない方法で音楽を記述し、音楽の特徴を研究する活動と定義している。この定義自身は、兼常清佐日本民謡研究から発展させた*1。情報民族音楽学のイメージは学生時代に作ったので、課題の構成がとても広範囲に及ぶ。課題への取り組みを実践するにあたっては、全体を手掛けるというものではなく、世間の動向を見ながら、ここで示した課題に優先順位をつけて実行することになる。全体構成はものすごい大風呂敷ではあるが、研究という世界では、個人を単位とする活動であっても、何をやりたいのかをはっきりさせる上では予め大風呂敷を広げることが必要なのではないかと思っている。

 

以下、情報民族音楽学という用語で想定している課題の一覧を示す。課題の下に副項目として示した課題ですら、一巻の論文では収まりそうにない規模がある。

課題1.情報学的採譜の概念定義と採譜システムの実装

特定の記譜法から独立な記譜法を得る事を目的とする。解決手段として、音声情報処理技術で使われている特徴パラメータを使う。ピッチレコーダーの機能を参考にして、声の高さ、声の強さ、スペクトルパターンの三つを一組とする音声の特徴パラメータを時間軸に対してプロットしてグラフを作成する。このグラフに対して対話的にセグメンテーションを行い、音符に相当する単位を切り出し、音符のもつ属性をセグメントの属性として割り当てて、採譜結果とする。

1-1.概念設計

1-2.詳細設計と実装

1-3.試験、運用及び、改善

採譜作業をサポートできることが保証されるまで、試験、運用と課題抽出、改善を繰り返す。

月渓著「日本音楽との出合い」059頁に声明を五線譜に採譜した例があるが、声の息遣いを感じさせるように、強弱の変化の指定には非常にデリケートなものがある。採譜作業をサポートする、とは、この程度の微妙な特長を扱うことでもある。

課題2.記譜法を設計する問題

セグメント分けされ、属性付けされたグラフデータから、音符及びに音符に割り当てた属性を見易く表示して、楽譜化する。

2-1.伝統邦楽譜の形と譜が表示する属性

2-2.(特定の記譜法について)変換方法の具体化

2-3.グラフデータから伝統邦楽譜を生成する試行例

2-4.新しい記譜法の設計例

附録 用語集

記譜法を設計する上流工程で収集し整理した用語の一覧。楽譜を構成する要素の形、名称、設計値を収める。

課題3.音色及び声の音韻

声の特徴パラメータにはスペクトル情報が含まれる。これを使って、歌詞の音韻情報を取り出して、歌詞を含む採譜結果を作ることができるか。

3-1.IPAによる音韻の分類と音声パラメータの表現力

3-2.声の記録がもつ背景音とこれに対応する方法

3-3.楽器音を表す特徴パラメータ

課題4.記録の総合と維持

音楽は芸能の構成要素として位置づけられる場合がある。芸能の構成要素としての音楽を記録するということは、芸能を記録し、音楽を芸能の中に位置づけて記録する、ということにあたる。芸能を記録するには、歌のほか、朗読、舞い、これらを組み合わせる原則、を記録することが必要になる(殆どすべての伝統邦楽が相当する)。

1節で導入した情報学的採譜という言葉には音の記録という意味しかなく、芸能の記録には不十分。記録を総合する手段が必要。

同時にこの記録は、芸能とともに長い期間維持・参照されることがあるので、維持に係わる問題点が起こらない(解決手段がある)ことが必要。

4-1.音楽を含む芸能の構成

4-2.音楽を含む芸能を総合的に記録するための情報モデル

4-3.記録の永続的な保存及び参照可能性の維持

課題5.伝統邦楽への情報科学的アプローチ

日本語及び伝統邦楽の由来・維持・継承に関連して、情報に係わる部門を支える手段を見出す。

*1:特定の音楽ジャンルには依存しないという定義から、対象として選ぶ音楽は日本音楽に限定しない。シュプレヒシュティンメのような声にも適用できる方法を目標とする。追記