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狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

音律計測の具体的なイメージ

伝統邦楽の声楽譜というと例えば次がある。

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この譜は催馬楽歌ころもがえの出だしの部分で、「催馬楽朗詠墨譜集(薗広進監修、催馬楽・朗詠墨譜集、日本雅楽会、昭和54年8月)」より引用している。

 

慣れないと取り付く島もないので、日本音楽の入門的な解説書には、五線譜に採譜した例が載っていることがある。

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この譜は、日本音楽の歴史と観賞(星旭著、音楽の友社、昭和51年7月)より引用している。

 

墨譜の折れ線と五線譜とを歌詞の一字単位に比較すると次の表が出来る。ここで折れ線の線分を「博士」と呼んでいるが、これは仏教声楽の声明の用語を借りている。

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注記 五線譜パターンの項目は、上記参考の五線譜を調子記号に従ってニ調の移動ド唱法で書いている。(ソ)、(ミ)は前打音。

 

折れ線を構成する線分が一つの音の単位を表すとすると、この音の単位は小さなメロディを構成していることが見て取れる。五線譜で記譜されているが、各音符を実際にはどの音で演唱すべきか、考えてみるとよく判らなくなる。この辺りは伝統音楽の基準に則るしかないのだが、この基準が判ったとして、それをどう書きしるすかについては工夫が要る所だろう。

 

上代歌謡を五線譜に採譜する活動はずいぶん前に行われていて、催馬楽朗詠譜については既に出版物、芝祐泰編著、五線譜による雅楽総譜、巻一 歌曲編、カワイ出版ONLINE[ISBN9784760934010]がある。これと上記墨譜集とを比較すれば、伝統譜と採譜結果との比較をフレーズでなく曲単位で行って、比較を完了できるはずである。

 

で、ここまで辿りつくと、次は、各音の本当の高さは何かという問題が出てくる。民謡の採譜と違って催馬楽譜には音の高さが書いてあり、この高さには基準が決まっている。上記「五線譜による雅楽総譜」には、雅楽歌曲楽式便覧というセクションがあり、音の取り方が説明してある。

音を取る方法は、伝統的な用語で順八逆六と呼ばれる手順に準じるものであり、二つの音の高さを両端を含み間に挟まる半音の数で指定している。八というのは、二つの音を両端としてこの間に両端を含めて八個の音を含む音の組み合わせ、というとややこしいが、具体的には五度(ド、♯ド、レ、♯レ、ミ、ファ、♯ファ、ソ)を指す。

ここでドレミファソと♯とを使うと平均律で考えていると誤解されるが、そうとは限らない*1所が紛らわしい。

 

もう一つ紛らわしいのは、催馬楽歌は原曲なのか編曲なのか、という点であり、楽器で演奏するならともかく声で演奏する曲では音程の取り方が自由な分、書いてある音の高さは雅楽風に演奏する際の目安であり、原曲とはことなる・・・という可能性が出てくる。

 

もちろん、証拠がなければ全てが想像に留まる。この点が形が残らない音の難しさなのだが、だからこそ、測定値を積み重ねて何か言える事が見つかれば面白い。

 

 

*1:ピタゴラス音階の音律は平均律と異なるように