狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

信楽さん第三形態

情報処理と人文科学との係わりについて信楽さんがこれまでに作っていたメモの構成は、大きく分けて次の三つの形態があった。

第一形態:混沌状態^^;

兼常清佐日本民謡研究」という報告書があって、研究活動は昭和26年に終わっているのだが、声の波形データから数値計算で高さを導く方法に則って一貫してデータが作られている点が非常に興味深い。譬えて言えばデジタル信号処理に基づく民謡研究が有効であることを、電子計算機が現れる以前に、実証したもの。

最初は、声の推定から始めて、声の特性の推定、楽譜の編集と印刷、楽譜からの音の再現、他を手当たり次第に^^;ソフトウェア化すると、決して完成されたとは言えない兼常の研究を再起動するきっかけくらいにはなるのではないか。

という、研究計画という意味では甚だ行きあたりばったりな案。

第二形態:情報民族音楽学

行きあたりばったりにソフトウェアを作成し続けると何が起こるかというと、一つのソフトウェアを長期間維持するための作業*1、異なるソフトウェアを相互接続するための手続き、ソフトウェア・データを流通に乗せる*2ための、送り出し・受け入れ処理が発生する。しまいには、研究作業しているのか、維持作業をしているのか、判らない事に(多分^^;)なる。

そこで、ある研究分野の全体像を見て、現れるソフトウェア・データを予め列挙しておこうか、ということを考えてみた。ソフトウェア・データの構造の骨格(要求仕様)を予め固定しておけば、同じカテゴリのソフトウェア・データが極端に違う構造を取る危険をある程度は回避できるのではないか*3

第三形態:Algorithmic modeling

ある研究分野を固定した時に、情報分野からその研究分野に発言できるか*4という問題が起こる。伝統邦楽では、特定のジャンルには特定の継承者が決まっている。従って、「伝統邦楽における声の特徴」という簡単な一言が、複数の継承者を横断して特徴を知るという内容をもつことから、実効はとても複雑な様相を呈することになる*5。このような活動を行おうとすれば、純粋に情報科学の立場から音楽について発言し、様々な音楽の分野で継承されている具体的な内容については継承者の判断に任せることにするのがよいのではないか。

と言う訳で、モデリングという領域に注目し、これを基盤として、その上に情報民族音楽学を組み立てたらどうなるか、という問題としてみた。科学的モデリングという用語があり、物理学など自然科学は自然をモデルと同一視して展開される。これ位に、モデルが基礎的な位置にある。「科学的」モデリングという以上、人文・社会科学にも科学的モデリングが成立するはずであり、作り方を工夫してその分野の基礎として使われるモデルが出来たら、それはそれで面白そう。

そんな目論みから、民族音楽学における科学的モデリング(特にここではAlgorithmic modelingと言うことにする)を検討する、ということにして、これが第三形態。

形態を決めたら、これからは第一形態の実体みたいな事ができるのではないかと思ったりもしている。

*1:システムが変わる、OSが変わる、使っているアプリが変わる、・・・

*2:商品化という意味ではなく、共通のツールとして利用するために。

*3:ある意味で、情報技術の標準化-但し、製品でなく、設計の。

*4:情報技術の土台とその研究分野の土台の双方について理解し、双方が、発言する際の土台を認定出来ているか。

*5:ある継承者が認知する音楽の精度が継承する音楽とその外にある音楽との間で全然合っていない場合、関係者を集めて議論することがとても難しい。参考「日本音楽の基礎概念」では、著者の領域である日本音楽とその外にある西洋音楽との認知の精度が全然違う。