狸系の里 シーズン2

はじめの一歩、二歩、散歩・・

科学的な音楽研究

さて、「兼常清佐の、民謡の科学的研究への姿勢」を受け継ごうと企てると、まず、民謡の科学的研究、という言葉をどう意味づけるかが問題になる。以下で検討する。

 

日本語には冠詞がないので*1書きにくいのだが、「民謡の科学的研究」という語句がもつ内容には基本的に次の九つの選択の余地がある。

冠詞なし不定冠詞定冠詞}民謡の{冠詞なし不定冠詞定冠詞}科学的研究

ここで、其々の冠詞は英語に倣って、語句の内容について次の規定を行うものとする。

‐冠詞なしは、概念的な内容。そもそも論、哲学的な議論。

‐不定冠詞は、具体的な内容。研究で取り上げる内容を具体的に指定して議論する。

‐定冠詞は、特定の内容。例えば兼常の研究を兼常の装置で再現する。科学史的な議論。

そこで

1) 民謡とは何か、科学的研究とは何か、民謡の科学的研究とは何か

2) 民謡というものの(ある)科学的手法による研究

3) 民謡というものの(特定の)科学的手法による研究*2

4) (ある)民謡を研究するための科学的研究とは何か

5) (ある)民謡を(ある)科学的手法で研究すると何が判るか

6) (ある)民謡を(特定の)科学的手法で研究すると何が判るか

7) (特定の)民謡を研究するための科学的研究とは何か

8) (特定の)民謡を(ある)科学的手法で研究すると何が判るか

9) (特定の)民謡を(特定の)科学的手法で研究すると何が判るか

 

筆者は「民謡の科学的研究」につく冠詞については次のように考えている。

兼常の研究を継承するにしても、使うシステムは最新の情報技術を使って再構成するつもりでいる。従って、科学的研究に付く冠詞は、冠詞なしでも定冠詞でもなく、不定冠詞付きの形になる。日本語には不定冠詞はないから、考えている「科学的研究方法」はきちんと提示しなければならない。

 

音楽という対象については次を考えている。

基本的な問題意識は次の通り。

上代の声楽曲に次の四つのグループを識別する*3

  1. a) 日本固有の声楽曲
  2. b) 奈良仏教の声明(サンスクリット語による声明、梵賛)
  3. c) 平安仏教の声明(漢語による声明、漢賛)
  4. d) 鎌倉以降の仏教の声明(日本語による声明、和賛)

 

科学的研究については次を考えている。

科学的研究とは、研究の対象と同一視できる模型を創作し、模型の観察を以って対象の観察と見なす論考を言う。模型が対象と同一視できることはその科学的理論が保証し、その科学的理論が保証する観察法による限りは模型と対象とは区別できないものとなる。

但し、科学的方法では、模型を制作する基礎となる理論を対象の有限的な観察結果から帰納的に導く。従って、理論はあくまで仮説であるから、模型が対象とは違う振る舞いをすることが起こりえる。模型の振る舞いに疑問が起こった時には、仮説を棄却することがある*4

 

この大きなゴールに対して、出来そうな目標としては次を考えている。

日本の音楽について文書を起稿し印刷する際に使う文書構成要素*5を丹念に揃える。ここで「丹念に」という言葉は、品ぞろえだけでなく、デザインの標準化を含む、という意味に使っている。

*1:筆者自身は漢字仮名交じり文が日本語の表記法として固定する際に、接頭語の影響力が薄れたことが、日本語に冠詞相当語句が現れなかった原因ではないかと想像するが、それはともかくとして。

*2:例えば兼常の方法を様々な民謡に適用する。

*3:但し、時代区分には誤解があるものと思う。要は、歌詞の言語が置き換わったときに旋律がどのように継承されたか、仏教以前の上代歌謡の音階を含めて、相互関係を調べてみたい、という問題意識。

*4:古典力学に対する量子力学相対性理論

*5:複合文書を想定すると、テキストばかりでなく、文書レイアウト、図記号、楽譜、音データなども想定される。